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福島事故に思うこと

2012年3月1日                     テノール 中川晴夫
日頃はJUNでコーラスを楽しんでいるが、他にエネルギーレビュー誌に評論などを書いた連中と月に1度会ってワインを楽しみながらワイワイガヤガヤと議論をしている。ワインの会と言いながら酒、ウイスキー、「なんでも来い!」なのだ。場が場なので原子力、石油についての話が多い。原子力について賛否それぞれの立場に居た者が、本音で話し合って見ると実に多様な意見の持ち主であることが分かり真に楽しい。あるとき、勢いで「日本の復活に向けて、それぞれが意見を述べるべし」、ということになり書く破目になった。以下は、エネルギーレビュー誌21012年3月号に掲載した私の評論だ。本音を書く約束の上、紙面に制約もあったので勢い余って転びかけている部分もあるが、JUNの仲間からJUNのホームページに載せてはどうかとのお誘いを受け、生来の軽はずみな性分でついつい乗ってしまった次第である。
nakagawa1_convert_20120302092557.jpg
自分も原子力関係者であるため、事故直後は友人達の寄こしてくるメールに対し、お詫び、言い訳、反論を取り混ぜた返信メールの作成に毎日が過ぎていた。最も手厳しい叱責は、想定外事項に対する原子力関係者の想像力の欠如と無為無策についてであった。一方で新聞、テレビが伝える事故情報にバランスの欠如、情けないほどのタイムリー性のなさを思い知らされた。水素爆発と同時に放出された放射能をリアルタイムで観測していたのは米国の衛星だったそうだ。観測結果から在日米国民に避難勧告を出し、同時にその結果を日本政府に伝えたらしい。
日本のマスコミは発電所の中で起こっている事柄について命がけと言ってよいほどの取材を重ねていたが、それと同じ熱意で放射能雲の動きと放射線量のデータ収集に力を入れていただろうか。なぜ国は拡散予測と放射線モニタリングのデータを避難計画に活用できなかったのか、マスコミはなぜこれを追及しなかったのか、という残念な思いが残る。原子力の復活再生には広域の放射能拡散予測とモニタリングによる確認を柱においた不断の監視活動と、一旦危急存亡の時となれば、気象及び被ばく線量を的確に把握し、避難区域の設定から避難指示命令へと、行政機構が円滑に機能する統合システムの再構築が不可欠である。
事故直後からしばらくの間、ボランティアで自宅近辺の環境放射線測定を行った。日本原子力学会員有志の呼びかけで、国と地方自治体が測定し公表しているモニタリングポイントの穴を埋めようと観測員を募ってきたので応じたものである。ヨウ素の放射線が卓越している期間であったので測定を始めると放射線強度は連続して下がってきた。二か月間観測を続けたが、0.35マイクロシーベルト/時(μSv/h)近辺まで減衰したあたりから大きな変化はなくなってきた。
観測結果をグラフで示しておく。
gurafu1_convert_20120302092840.jpg
10年ほど昔に測定した当時の自然放射線量(0.1〜0.15μSv/h)の約三倍で、墓石に使われる赤い色の天然花崗岩(0.2〜0.3μSv/h)とほぼ同じ程度だ。校門での値が他よりも低いのは、雨と共に降った降灰が、低傾斜のコンクリートを伝って流れたためで、念のためチェックした校庭ではこれよりも1.5倍ほど高い値だった。
理研のサイトに茨城県下の放射能測定値の分布図が過去1か月前から載っていると友人が知らせてきた。水素爆発のあとしばらくして茨城県に太平洋側(海上)から放射能の高い気団が入ってくる様子が見えるとのことだ。水素爆発によって空気中に放出された大量の放射性物質が北東の風に乗って茨城県北東部から南西方向の各地にばらまかれたと言うことだ。千葉県北西部では、3月21日にわずかな降雨があったので、この時降雨と共に放射能の降灰があったことが分かった。実測値から外挿して空間線量の最高値は1.4μSv/h程度であったと想像している。友人が言うには、問題は広範な降灰を日本政府は一切国民に知らせなかった点で、「念のために避難しろ」とか、「測定値は減衰域に入るから少し遠いところへ行けば濃い値は出ず人には影響がないので安心しろ」と根拠も示さず言うのはおかしい。三月の中旬が一番危なかったのに日本政府もマスコミもピントはずれなことばかり放送して国民をだましていた。こんな国内の対応を見ると、原子力安全××等の組織が国民の原子力の安全にとって全く存在意義がないと思うと憤慨していた。原子力の門外漢ですら気象と降灰を自分で調べ、事態の把握に迫っていたのだ。昨今、インターネットによる情報交換は行政側の想像を超えて発達している。これに政府が素早く、的確に対応しきれていない状況をみると、日本の統治機構に重大な欠陥があるように思えてならない。
家庭菜園は3月にスタートし、連休の忙しい植え付け時期を過ぎると、じゃがいもの取り入れが6月頃から始まる。この頃、野菜つくりの友人が放射線の心配を盛んに言ってきた。最大の関心事は、「自分のことは心配していないが、孫たちに食べさせて大丈夫だろうか? 大人になって障害が現れ、ガンになってしまうと死んでも死にきれない」というものだった。体に入ったセシウムは、生理機能が働いてしばらくすると体の外に出てしまい、やがて減衰する、いわゆる生物学的半減期があることを一般の人はほとんど知らない。また、放射性医薬品が治療に使われていることは知っていても放射線を使って人体に影響を与えることなのだ、とまでは理解が深まらない。胎児への放射線の影響は、ごく初期の発生時期に最もリスクが高いが、それを過ぎると大人と子供で変わりはないこともあまり知らない。子供に注意を払うのは、放射線に敏感な臓器の全体重に占める割合が子供の方が大人より大きいからで、子供の臓器が大人の臓器よりも特に強く影響を受けると言うことではない。放射線の人体に対する影響についての情報は、まだ一般には十分に伝わっておらず、理解されていないのだ。
また空間線量についても、「ここは、高い線量ではないのか、心配はないのか」と質問も受けた。世界的に見て、自然環境放射線は年間1㍉シーベルト(mSv/y)から10mSv/y程度までの変動幅があり、測定結果はこの下限を僅かに上回るものだと説明し納得してもらっている。
野菜、米、肉などの食糧、また飲料水などによる内部被ばくとなると、ベクレルの説明、ベクレルとシーベルトへの換算の説明が非常に煩わしく、時間もかかり、大抵の聞き手は半信半疑の顔付きとなるのが落ちだ。ある程度信頼関係が構築されていてもこうだから、見知らぬ人相手では、「納得していないだろうな」と考えた方がよい。
一般の人と業務従事者とで被ばく限度値が異なっていることについて、どれだけ理解がされているのだろうか。国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づき、各国が法令なり、基準で限度値を決めており、一般人は1年で1mSv/y、業務従事者は5年で100mSv/5y、ただし1年では50mSv/y以下としている。ICRPは、瞬時に100mSvの被ばくを受けた場合、人体の末梢血に一時的な血球の減少があることは確認できているものの、これよりも低線量では、人体への影響については確認できていないとして、極低線量までの区間については、確率的な影響が線量に直線的に比例して存在していると仮定して、放射線による便益とリスクを合わせ考えて限度値を勧告している。医療、業務従事者、一般人に分け異なる限度値を勧告しているのは、人によって便益とリスクが違うと考えるためである。この話もせず、また緩やかなのか、瞬時の被ばくなのか被ばくのタイプも説明せずに、1mSvを超えると人体に影響があるとテレビ等で断言する解説者が見受けられる。業務従事者、患者は必ず放射線で体が侵される存在であると言いたいのだろうか。
ところで最近になって、過去に勧告した限度値の1mSv/yを2、3倍に見直そうではないかとの提案がICRPの委員長から出た。変更すべきとするにはデータがまだ十分ではないとして否決されたが、ICRPの勧告は、自然科学的な根拠に基づいていながらも、数値そのものの決定は防護政策論の立場に立って出されている。こうした事実と経過を明らかにせずに、ただICRP勧告値を科学的真実だとして鵜呑みするだけでは、放射線の恐怖を煽りたてる論調に組みすることになりかねない。したがって、国はICRPの勧告を受けて、それをどのようにして規制に取り込んでいるのか説明する必要がある。特に放射線影響に関する研究の現状を正確に把握し、低線量に対する国としての統一見解をまとめる努力は決定的に不足しており、専門家がそれぞれ勝手に自分の解釈をメディアで開陳している現状では混乱に拍車がかかるだけで、人類が放射線の恐怖から脱却できるのは程遠いものとなる。
たとえ原子力エネルギーのコントロール技術が科学技術によって驚異的な発達を遂げたとしても、人々が放射線に対する恐怖から脱却できない間は、原子力エネルギーの活用に不安を抱き続ける人はなくならないであろう。恐怖に真正面から向き合い、放射線の影響についての恐怖を不安へ、不安を容認へと変え、容認を信頼へ、信頼を確信へと繋げる努力が今ほど原子力に求められている時はない。
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  1. 2012/03/01(木) 13:10:38|
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