コールJUNブログ

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笑える話・笑えぬ話

全国の図書館に無償で寄贈されているエネルギー・レビューという名の専門誌がある。
以前編集員を務めていた縁で「珈琲こぼれ話」というコラムに何か書いてくれとの依頼を受けた。月に一度の飲み会に参加してはヨタ話しかしていない小生には、いささかシンドイことではあったが、とかく放射線の話となるとギシギシとキシムこの世に、ひとつくらい肩の力を抜いた話があっても良いのかなと思って書いた次第。以下にエネルギー・レビュー9月号に掲載した「笑える話・笑えぬ話」を紹介します。 (コールJUN テナー 中川晴夫)

笑える話・笑えぬ話
何年か前の保健物理学会の会合で、妊娠している女性の被ばく限度を特別に低い値に限定する、というICRPの勧告に沿い、被ばく限度管理上の諸課題について真面目な学者が集まり検討会が行われた。妊娠していない女性の被ばく限度は男性と同じ被ばく限度とすべきというところまではスンナリ話が進んだが、妊娠をいつ確認するのか、そもそも確認できるのか、妊娠の告知を求めるのか、求めないのか、求めるとすれば誰がそれを求めるのか、得た情報はどう管理するのか、という段になって議論が激しくなり、とうとう収拾がつかなくなってしまった。ある者は「それではセクハラだ」と怒鳴り、ある者は「データに信頼性の欠ける管理は管理と言えず、意味が無い」と冷ややかに応酬する。丁々発止の議論が最高潮に達したその時、会場から一声、「あなた方男性ばかりで私たちのことを勝手に議論しないでください」。その瞬間、会場は水を打ったように静まり返ってしまった。
あるとき、上野の博物館で英語の説明ボランティアをやっている古い友人に、このエピソードを話したら、「笑える! チャンスがあったらこの話を借りるよ」と返してきた。人に話をするときは、とにかく笑えるような話をしないと駄目だという信念の持ち主で、ボランティアで説明する前には、うけを狙った原稿を練り、「面白いか?」と聞いてくる。元々英語が苦手な小生には、英語では面白いかどうかよくわからず、いつも「まあ意味は分かったよ」と曖昧な返事をしてお茶を濁している。釈迦入滅図の説明に「北枕」の説明を加える挑戦では、頭が北で顔が西、すると釈迦を拝む人は東向きと、「犬が北向きゃ尾は南」と言った具合に話は進んでも、なかなか北枕を敬遠するところまで話が行かない。結局、「こりゃ何だ?」で終わってしまった。
それでも聖徳太子像を前にして聖徳太子の話を外人にした時のエピソードは笑えた。聖徳太子が実在の人物ではないとの説もあり、この像が太子の姿を現したものかどうか不明と説明する下りで、「私(友人本人)も太子の顔をよく知らないが、それは私の財布の中に太子が余り長く居た事が無いからだ」とやったところ、その説明を聞いた外人がニヤリと笑って「実は私も女王陛下の顔はよく知らないよ」と言ったそうだ。笑いが何時、何処でとれるのか、つかみどころがないが、もしあの保健物理学会の会場でこんなやりとりがあったらと想像すると楽しくなる。
先日、テレビで福島県郡山市に住む農家が故郷の原発周辺の水田で福島米の復興に取り組んでいる様子が紹介された。彼は事故後、郡山に妻と避難し、子ども夫婦と孫は東京に転居してしまったそうだ。事故後最初の生産米は栽培試験用とされ全て廃棄されてしまった。そして、次の年は全袋検査を経て自家用米として彼らが食べたが、残りの大半は備蓄米として倉庫に保管されてしまった。したがっていまだに彼の米は市場に流通していない。彼が生産したコメは全て食品安全基準を満たしており、さらに故郷のその他の農産物、海産物も基準を満足している。しかし、食糧の安全が確認されていながら、その一方で食糧を生産している本人はいまだに遠隔地から自宅に戻れず、孫たちとの団欒も戻ってきていない。まことに矛盾した話であり不思議な話である。放射線に対するいわれなき恐怖や風評が彼の帰還を遅らせ、故郷の復興を妨げているのだ。もしこれが遠い外国での話であれば、またもしこれが遠い昔の話であれば、人々は笑い話のひとつに入れてしまうだろう。しかし、今はむしろ暗澹とした気持にさせられてしまう。全く笑えぬ話だ。そんな中、遠隔地から故郷の水田へ通いながら、今年こそ福島の米を市場に投入したいと頑張っている彼の姿には明るさがある。この先にこそ笑える話が待ち受けているのだろう。
原子力村OB人 中川晴夫     

(注1)保健物理学会:正式名、日本保健物理学会。放射線防護の専門家が参加し、国際放射線防護学会(IRPA)の日本窓口学会でもある。
(注2)ICRP:国際放射線防護委員会。世界の放射線防護の専門家の代表で構成。
 放射線防護について勧告を行っており、各国はこの勧告を尊重し、大多数の国はこれを自国の放射線防護法令に取り入れている。
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  1. 2015/08/28(金) 20:59:46|
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